2013年8月9日金曜日

カッパの神様

こどもの頃、川に竹竿をこしらえ、フナやハヤをとりにいった。テナガザリガニやドンコ、ドジョウ、夢中だった。最初は釣ってるのだが、毎度気づけば、体まですっぽり川の中、泳いでもぐって遊んだ。親父が新築で家を建てたときにはたくさんの木材が私に与えられたので、川であそぶための船やおもちゃをたくさんつくった。
そんなふうだったから、いつも帰りは日がとっぷりくれてしまうことが多かった。
心配した祖母がいつも言った。「あんまり、おそうまで一人で川の中におると、しりこだま抜かれて帰ってこられんごとなっばい。ほら、かっぱの神様の泣きよらす。聞こえるやろが」祖母が指差す真っ暗な川の方角の草むらの奥で、かっぱの鳴き声が確かに聞こえるようだ。えたいのしれない大きなカエルのような化け物のような。
そこは、町の宮司さんがかっぱの神様を祭っているといって確かに町の大人たちが夏になると何やら祈願ごとをしているのを見ていたからだ。うっそうとおいしげった川の森の中にひっそりと、またそれは威厳をはなっている石碑と墓のようなものがあったのを覚えている。そこにいるのだ。おそくまで川で遊んでるわるいこどもを川の中に連れて行くというカッパの神様が......ただただこわかった。ばーちゃんえすかよ〜(怖いよ〜)
年月が流れ、ばーちゃんの葬式で生まれ故郷のその川へ行ってみた。かっぱの神様はどこへいったのだろう。ふと見ると自分のわきにさんさんと太陽の光にさらされた見覚えのあるあの石碑のようなお墓のようなものがあった。こわかった川の森は切り倒されコンクリートと道路の間に私の知らない川が流れていた。